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2025年09月28日 社長ブログ 社長コラム
価値観との対話:“こだわり”と“わがまま”は紙一重──本音を引き出す聞き方
このシリーズでは、
家づくりの現場で私が感じてきた
「ちょっとした違和感」や
「本当に大切にしたいこと」を、
ひとつずつ言葉にしています。
素材や性能、デザインや価格。
選択肢があふれる今の時代だからこそ、
「何を選ぶか」よりも、「どう選ぶか」が
問われていると感じています。
家づくりは、
間取りや設備を決める作業ではなく、
“自分たちらしい暮らし方”を
見つける旅だと思っています。
このシリーズが、あなた自身の価値観と
向き合うきっかけになれば幸いです。
■ その“こだわり”、本当に自分の言葉ですか?
家づくりの打合せをしていると、
「ここは絶対こうしたいんです」
「この部分は譲れません」
そんな“こだわり”の言葉に
出会うことがよくあります。
もちろん、それは大事なこと。
その人がどう暮らしたいか、
どんな価値観を持っているかが
見えてくる瞬間でもあります。
しかし、こう思う時があります。
「それって本当に、その人自身の想いなんだろうか?」
■ 流行やSNSに“引っ張られてる”こだわり
たとえば、SNSで見かけた
人気の間取りやデザインを、
そのまま希望される方もいます。
「このインスタの家みたいにしたくて」
けど、よくよく聞いていくと、
「実は料理はそんなにしない」
「洗濯は外干し派で、乾燥機は使わない」など、
生活スタイルと合ってないケースが出てくる。
そうなると、それは“こだわり”じゃなくて、
「誰かの理想像に引っ張られた選択」かもしれません。
■ “本音”は、最初の言葉の奥にある
大切なのは、
お客様自身も気づいていない“本音”を、
引き出していくこと。
だから私は、打合せの中でこんな風に聞いていきます。
「なぜそう思われたんですか?」
「それって、どんな暮らしを想像してのご希望ですか?」
すると、
「ほんとは、夫が家事を全然手伝ってくれなくて…」
「子どもともっと近い距離で暮らしたいんです」
「実家が寒かったから、あったかい家にしたくて」
「そうか、この“こだわり”には、ちゃんと理由があったんだな。」
そう腑に落ちる瞬間があります。
■ 家づくりは、人生の“奥行き”に触れる仕事
間取りや素材を決める作業のように見えて、
家づくりは、実はその人の背景や人生に
触れる仕事なんだと感じています。
その中で、
「なんとなくこうしたい」が、
「本当にこうしたい」に変わることがある。
逆に「それは思い込みだった」と気づくこともある。
それでいいんです。
気づけることに価値があるのです。
■ “正解を出す”ことより、“一緒に見つける”こと
私は思います。
プロの仕事は、“答えを出すこと”ではなく、
“一緒に答えにたどり着くこと”。
言われたことをそのまま受け取るのではなく、
その奥にある感情や価値観を探り、
一緒に「本音」に気づいていく。
それが、本当に満足できる
家づくりにつながると思っています。
■ 境界線はあいまい。でも向き合い方は明確に
“こだわり”と“わがまま”の境界線は、とても曖昧です。
でも、その曖昧さを受け入れた上で、
一緒に丁寧に向き合っていく。
それが、私たちが大事にしている
聞く事ではなく、「聴く力」であり、
心から納得できる家をつくるための第一歩だと、
私は思っています。