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2025年10月19日 社長ブログ 社長コラム
これからの“家”を考える:「“単身世帯の持家率”が問いかける、これからの家のかたち」
●初めに
今、日本はかつてないスピードで
「単身社会」へと変貌しています。
総務省のデータによれば、
すでに全世帯のうち約4割が単身世帯。
しかも今後増加するのは、
若年単身ではなく高齢単身者です。
国土交通省がまとめた
「住生活基本計画見直しにおける議論の方向性の確認」資料(P9)には、
単身世帯の世代別・持家率の推移が詳しく示されています。
これを見ると、住宅政策・家づくりの前提が
大きく変わってきていることに気づかされます。
●単身世帯では「持家率」が半分以下
まず、【2人以上世帯】の持家率は、
年齢が上がるにつれて一貫して上昇し、
50代で70.0%、70代で88.7%と高水準を維持しています。
これは「結婚し、家族を持ち、住宅を購入する」
という従来のライフコースをなぞった人々の数字です。
一方、【単身世帯】になると様相は一変します。
・50代単身世帯の持家率は、たったの35.2%
・70代でも65.1%にとどまり、
2人以上世帯の70代と比べて20ポイント以上の差がある
つまり、単身者は家を所有していない割合が高く、
特に50代に至っては半数以上が持ち家を
持っていないという現実があります。
この「持家率の差」は、
将来の安心感や暮らしの選択肢に直結する問題です。
●持ち家がない高齢単身者が直面する課題
賃貸暮らしのまま高齢期を迎えることは、
複数のリスクを抱えることになります。
・賃貸契約の更新が難しくなる可能性(年齢・収入・保証人など)
・バリアフリーでない住環境の中での生活
・住宅改修が自由にできない制約
・居住継続性への不安(立ち退きや物件老朽化)
・地域とのつながりの希薄化による“見守りの欠如”
かつては家族や親類がこうしたリスクをカバーしてきましたが、
今や“おひとりさま”が増える中で、
その補完機能は薄れつつあります。
つまり、持家がない=住宅的なセーフティネットを
持たないことになりかねないのです。
●「単身でも安心して住める家」のあり方を再定義する
このような背景をふまえると、
今後の家づくりや住宅政策に求められるのは、
「家族がいる前提」の家ではなく、
一人でも安心して暮らせる住まいです。
ポイントは次のような要素です
・ライフステージに応じた住宅の選択肢を準備しておく
・若い世代から「買える」家を増やす(価格・面積・立地などの柔軟性)
・コンパクトで機能的な戸建てやコレクティブハウス型の提案
・高齢期を見据えた“更新できる”住まいの仕組みづくり
・単身者に寄り添った“住み替え支援”と“終の住処”の整備
たとえば、子育て世代のための広い家ではなく、
「夫婦のどちらかが亡くなった後も、
一人で暮らしやすい間取り」や、
「家族を持たなかった人が年を重ねても快適に暮らせる平屋」など、
終まで住める設計”を意識した住まいが求められます。
●住宅は「家族」の器から「個人の器」へ
私たちはこれまで、「家=家族単位の暮らし」を
支える器として捉えてきました。
しかし、単身世帯の増加が続く今、
住宅は“個人の人生を支える器”としての
機能を持つべきです。
これは、ただの住宅の縮小や効率化ではありません。
孤立させない設計、安心を担保する構造、
地域とのつながりを促す空間性。
こうした社会的視点が加わって初めて、
これからの家は“安全な港”として機能するのです。
「ひとりでも、最後まで自分らしく暮らせる」。
その価値を持つ住まいこそが、
これからの住宅の本質ではないでしょうか。
●参考出典
国土交通省『住生活基本計画見直しにおける議論の方向性の確認』(資料⑨)
該当ページ:9ページ(世帯類型別の世代別の持家率)