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2024年09月17日 社長ブログ
当たり前基準
住宅系ユーチューバーの活躍により「性能」と言うワードが広まり、
今や耐震、断熱、気密、空調など、各社数値を競っています。
ある意味、当社も同じかも知れません。
しかし、私は社員にいつも「性能推しの営業はするな」と言っていますが、
お客様がYouTubeで学び、質問責めなんて多々ありますので
どうしても数値の話も必要なのですが、、、
昔の住宅では性能という考え方が無かったので、
「大工さんが太い柱を入れてくれた」
「柱を多めに入れてくれた」
「大黒柱があるから」
「釘を多めに打ってくれたらしい」
こんな感覚的な事が基準となっておりました。
これは今から考えると職人さんの感覚なので
明確なエビデンスはありませんでした。
断熱も昔の家は断熱材を入れる事が
建築基準法には載っていないので、
法的な縛りも、検査体制もなく、
無断熱の家は結構ありました。
※2025年4月からは等級4が義務化ですので
流石に無断熱はないでしょうが、
因みに今も民間の検査会社以外は
公的な瑕疵保険検査はあっても断熱検査はありません。
気密性能を表すC値は昔の家を計測すると測定不可能ですね。
暖房を付ければ外から冷たい外気を室内に
引っ張ってコンセントから隙間風が、、なんてあるあるです。
そんな時代を経て、性能は格段に上がっていったと思います。
しかしその性能の基準の値ってどこなんでしょうか?
この答えはどこまでの性能値を求めるのか?
これは各会社の考えに左右されるのです。
私はプロとして学び、自分がこの工法、収まり、素材選定、性能が
お客様の役に立つと信念の元、今の家を作り上げました。
そしてそんな会社としての標準仕様はプロが一方的に決める事が正解と考えます。
今まで沢山の家を建築してきた中で、
どれだけこちらが必要性を説いても
「これはオプションです」と言えば、
殆どの方は追加予算を出してまでは必要ない、、と思い、
選択をしないという事が多々ありました。
それなら、自分達の当たり前基準である事は
全て標準仕様にした方がいいと強い信念の元、
今は家づくりをしております。
もちろんそれまでの過程には沢山の葛藤がありました。
「これはお客様の命を守る事だから標準にしたい」
「ヒートショックを無くすためには断熱性能も
等級6ギリギリではダメなので付加断熱を標準仕様に」
「耐久性を考えればこの外壁」
「内部結露を考えてこの通気方法でこの壁の構成に」
そうやって今の当たり前基準を長年積み上げてきました。
当たり前基準を作るにあたって、
葛藤があった事の代表的な事は「価格」です。
お客様の役に必ず立つ。
しかし、やればやるほど価格がアップする。
この葛藤は経営者としても沢山悩み、苦しみました。
しかし中途半端な家は作りたくない。
後で耐震性能をアップしたり、
断熱性能をアップする事は本当に大変ですし、
将来そのタイミングが来た際に数百万円の大きな出費となります。
だからこそ自分の信念を通したい。
誤解を恐れずに申しますが、
水回りは必ず交換時期がきます。
当社で手掛けてきた家も築10年以上の家が沢山ありますが、
10年程度経過すると関心するほど、オーナー様から連絡があり、
「給湯器が壊れた」
「エコキュートが動かない」
「食洗器が、、」
こんな感じです。
つまり、必ず壊れる設備には極力お金をかけずに、
後で簡単に交換が出来ない事に最初にしっかりと
お金をかけるべきだと思うのです。
建築は0から1.2.3、、と作っていくので
所謂、隠れる箇所が沢山あります。
仕上げ材以外は全て隠れるのです。
「この前の地震で結構家が揺れたから耐震等級2から3にリフォームして下さい」
「エアコンを付けても効きが悪いので断熱性能をアップして下さい」
「C値を2から1以下にして下さい」
こんな事を言われてもかなり厳しいです。
サッシもそうです。樹脂サッシ一択と私は考えます。
流石にアルミサッシはもうないと思いますが、
複合サッシから樹脂サッシに変更する事は出来ません。
サッシを交換するには足場を立てて外壁を捲り、
室内も解体をしなければなりません。
その際には雨終いの検討も重要です。
既存のサッシの上からカバー工法という方法がありますが、
お金がかなり高額です。
流行りの内窓も結局は室内に建具を施工となるので、
なんだか微妙です。※手軽に選択出来る方法ではありますが。
この標準仕様は入口価格
(会社がパンフなどに掲載している坪単価や仕様書)と
出口価格があると私は思っており、
入口価格で安く見せて、後はオプションで追加、、
なんて業界の常套手段です。
性能を上げる為にはオプション方法を用いて、
住まい手に委ねるのではなく、
作り手がプロとして入口からしっかりと根拠のある
標準仕様にしてオプションの選択が無い事が、
私は良いのではないかと考えます。
この辺りは、理想の押し付け、
オーバースペックなど揶揄する意見もあるかと思いますが、
安全、快適、光熱費、将来のリフォーム費用に
直結する標準仕様である各会社の当たり前基準が、
後の家に色濃く反映されると皆さまはご認識下さい。
家は一度建てたら最低でも30年は住むのではないでしょうか。
住宅ローンは35年で組む方が多く、
自分が亡くなるまで自分の家で住み続けたいという
当たり前の想いもあるでしょう。
そんな家は長持ちして当然だと考えます。
そして住んですぐに暑い、寒い、光熱費が高い、
地震に弱い、素材は化学製品だらけの空気環境、エアコンを付けても効かない、、
そして、築10年程度からリフォーム費用が都度のタイミングで出費となり、
新築で建てた際には小さかった子供の教育費用と重なり家計を圧迫する。
結果、老後の生活に影響を及ぼす。
家を建てるという事を今一度真剣に考えて欲しいと願います。
そして家づくりには「物」と「事」があり、関わるのは「人」です。
選択をして決断をするのは、作り手ではなく、住まい手の皆様です。
後悔のない家づくりをして欲しいと願います。