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2025年06月06日 社長ブログ 社長コラム
失敗しないリノベーション:性能(耐震)編
リノベーション(以下リノベ)と新築工事は、
進め方や注意点が大きく異なる点があります。
この「失敗しないリノベーション」シリーズでは、
リノベならではの注意点をテーマごとにお届けします。
第6回目は「性能(耐震)編」です。
リノベは新築と違い、耐震等級という指標がありません。
よって、リノベの場合は「評点」という指標になります。
評点とは地震力に対して建物が倒壊、崩壊しないかの判断です。
■ 評点とは?4段階で見る耐震安全性
・評点0.7未満:倒壊する可能性が高い
・評点0.7~1.0:倒壊する可能性がある
・評点1.0~1.5未満:一応倒壊しない
・評点1.5以上:倒壊しない(耐震等級3相当)
評点1.5以上は、新築住宅の耐震等級3に該当するとされ、
高い安全性が期待できます。
■ 評点に影響する6つの要素
評点は以下の項目を総合的に評価して算出されます
・地盤・基礎
・壁の量
・壁の配置バランス
・柱と梁・土台の接合
・劣化状況
・重心と剛心のズレ
とくに築年数が古い建物では、
基礎や土台、大引きなどに劣化が見られることが多く、
これが大きく影響します。
また、診断時には、
劣化によって耐力が低下している前提で評価します。
更には、「重心」と「剛心」のズレが大きい建物は、
地震時にねじれを起こしやすく、倒壊リスクが高まります。
構造計画においては、このバランスも非常に重要な評価項目です。
■ 目指すべきは「評点1.5以上」
倒壊しないをしっかり目指すなら、
評点1.5以上を推奨します。
「一応倒壊しない」という状態で、
本当に安心できるでしょうか?
理想を言えば、評点2.0以上を目指すことが望ましいです。
■ リノベ後の重心と剛心のバランスを配慮した設計と耐震補強計画
リノベーションでは、
間取りの変更や壁の撤去・増設などにより、
建物の重心と剛心の位置が大きく変化することがあります。
重心とは「建物の重さの中心」
剛心とは「建物の強さの中心」であり、
この2つが大きくずれていると、
地震時に建物がねじれるような揺れを起こし、
倒壊リスクが高まります。
そのため、リノベーション計画では、
単に現状の診断結果をもとに補強するだけではなく、
リノベ後のプランにおいても
重心と剛心のバランスを整えることが必要不可欠です。
具体的には、以下のような配慮が求められます
・壁や耐力要素の配置を、重心・剛心が近づくように調整する
・片側に耐震壁が集中しないように全体のバランスを見る
・間取り変更と補強計画を一体で検討する
こうした設計の工夫により、
リノベ後の住まいも地震に強く、
安全な構造が確保できます。
■ 診断から補強までの流れ
耐震診断によって現在の状態を数値で把握した後、
その結果をもとに耐震補強計画が策定されます。
そして、それに基づき補強工事を行っていきます。
■ スケルトンなら補強はしやすい
リノベでは、
既存の外壁や屋根、壁、床などを解体するケースが多く、
いわゆるスケルトン状態(構造体だけ残した状態)になります。
この状態であれば、耐震補強も効率よく、
確実に行うことができます。
■ スケルトンにできない場合は?
壁を解体しないまま行う「部分補強」という選択肢もあります。
特に、診断の結果「評点0.7未満」と出た場合は、
早急に耐震補強を行う必要があります。
しかし、耐震補強=リノベの前提なら予算が高額になります。
このような場合ではリノベよりも
まず耐震補強のみを優先して実施することが可能です。
部材は高価でも、解体費を省略できるため、
トータルで見ればコストを抑えることもできます。
■ 専門性が求められるからこそ、業者選びが重要
耐震補強には、次の3つの力が欠かせません。
・正確な「診断力」
・適切な「補強設計力」
・丁寧な「施工力」
すべてを高いレベルで備えている会社を選ぶことが、
家族の命を守る第一歩になります。
■ まとめ:構造の安全性こそ最優先
・リノベーションでは「耐震等級」ではなく「評点」で耐震性能を判断します。
・評点1.5以上を目指すことで、安心できる住まいが実現します。
・補強方法はスケルトンでも、部分補強でも対応可能。
耐震性能は、もしものときに家族の命を守る最後の砦。
間取りやデザインよりも先に、
まず「構造の安全性」を見直すことが、失敗しないリノベの第一歩です。
この情報がお役に立てば幸いです。