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2025年11月17日 社長ブログ 社長コラム
これからの“家”を考える: 「“ふつうの暮らし”って、もうどこにもない」

●初めに
「リビングは広い方がいい」
「家族は一緒に食卓を囲むもの」
「夫婦の寝室は同じがあたりまえ」
ほんの20年前までは、
こうした“家族像”が家づくりの前提でした。
しかし今、時代は大きく変わりました。
・DINKs(子どもを持たない選択をする夫婦)
・シングル世帯の増加
・二拠点生活・ワーケーション
・夫婦別寝・趣味空間の確保
・子ども部屋は不要派 vs 絶対必要派
・親世帯と同居しない“新しい近居”スタイル
このように「これがふつう」という暮らしは、
もはや存在しません。
そして、この多様性こそが、
これからの住宅設計に最も大きな
影響を与えるテーマなのです。
■ 「間取りの常識」が通用しない時代
私たち工務店がこれまで
培ってきた経験や型には、
「3LDK」「4LDK」
「対面キッチン」
「洗面・脱衣一体」などの
“成功パターン”がありました。
しかし今、それがかえって
“押しつけ”になってしまうことがあります。
・一人暮らしでも「広いキッチンがほしい」
・共働きだから「夫婦別動線で干渉しない空間が欲しい」
・夫婦それぞれが「仕事のための個室」を希望
・祖父母が「孫が泊まれる和室だけあればいい」
このように、住む人の暮らし方に
“正解”はないのです。
だからこそ、私たち工務店が
「解」を押しつけない姿勢が
求められるのです。
■ 住まい手の“内面”と向き合える設計とは?
設計力とは、
単に図面を引く技術ではありません。
住まい手の心の奥にある
“本音”や“葛藤”と対話する力です。
たとえば
「子どもが巣立った後の部屋をどう使うか?」
「介護が必要になったとき、自宅で暮らし続けたいか?」
「夫婦で価値観がズレているとき、どこに折り合いをつけるか?」
「趣味が生活空間に与える影響は?」
こうした“感情”と“暮らし”を行き来しながら、
答えを一緒に探す設計プロセスこそが、
これからの工務店に求められる提案力です。
■ 「正解を出す」のではなく、「余白を設計する」
多様化の時代において
最も大切なのは、“余白”です。
・ライフステージが変わっても対応できる間取り
・収納の使い方を固定せず、自由に変更できるつくり
・部屋数よりも“仕切れる空間”であること
・固定家具を最小限にし、住む人が“自分でつくっていける”余地を残すこと
・完成された家ではなく、「完成していく家」へ。
それが、これからの時代にふさわしい
家づくりのスタンスだと感じます。
■ 工務店は“聞く力”を育て直す必要がある
これからの工務店にとって、
図面を描く技術以上に重要なのは
「聞く力」かもしれません。
・暮らし方の希望にどれだけ共感できるか?
・言葉にならない不安や迷いに寄り添えるか?
・それぞれの価値観を否定せず“対話”で引き出せるか?
「3人家族やから3LDK」
そんな“思い込み”を手放すところから、
新しい家づくりが始まります。
■ おわりに
“ふつうの暮らし”がなくなった今、
家づくりは
“個人の生き方そのもの”を
設計する仕事になりました。
だからこそ、私たちは
「建てる人」である前に、
「聴く人」
「伴走する人」
「編集する人」にならなければいけません。
「これからの“家”を考える」
シリーズは今回で最終回です。
12本のコラムを通じて、
住宅が“モノ”から“想い”へとシフトする時代を
一緒に考えてきました。
これからも、
“答えを出さない”設計や打合せを恐れず、
住む人と一緒に“その人にとっての正解”を
探し続けていきたいと思います。