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2021年12月27日 家づくりコラム

見落とすと危険!10年後、20年後は大丈夫?住宅の耐久性

住宅の安全性能や省エネルギー性能。
見えない性能が、数値としてしっかり表されていると、安心感があります。
しかし、その性能の最高値はできあがった時。
20年後にその耐震等級の性能は、はたして担保されているのでしょうか?

家の耐久性について考える

あらゆる性能の最高等級を獲得した家。
盤石な住まいを手に入れたものの、その性能は永遠に続くものではありません。
モノに経年劣化が起こるのは致し方ないこと。
ですが、その経年劣化を少しでも遅らせることは可能です。

その考えのカギとなるのが、耐久性。

20年後、30年後の家に対し、その性能力を担保できるかは、耐久性についてしっかり考えられているかが、重要です。

長持ちしない? 日本の家

四季のある日本は、高温多湿。
ですから、例えば北欧風のデザインが好きだからといって、北欧の素材を使い、全く同じように設計しても、日本では長持ちしません。
年中乾燥している地域では影響されない素材でも、湿度が高く素材に水が含まれてしまう環境下である日本では、木が腐ってしまったり、反ってしまったりと、残念ながら同じようには維持できません。

日本で暮らす以上、その気候にあわせた工夫を施すことは、その家を長持ちさせる重要な要素のひとつ。
多湿であることはもちろん、梅雨や台風シーズンが必ずある日本では、外壁は雨に強いものにしておくことに越したことはありません。建築時に安価に抑えておいても、10年後には必ずといって良いほどメンテナンスが必要になってしまいます。
たとえ初期費用が少々高くついたとしても、雨に強い外壁材を選んでおけば、メンテナンス費用がかかりにくくなり、トータルコストではかえって安価に抑えることが可能になります。 

縁 創建工房が、外壁材には高い防水性と耐久性を誇る『白洲そとん壁』にこだわっているのはそのため。

この耐久性をより高めるために、創建工房では設計時点でさらにある「こだわり」を施しています。

神社仏閣が維持されているのはなぜ?

戦後、欧米文化へのあこがれが高まっていった日本。
高度経済成長期(昭和30年代・1955年〜昭和47年・1972年あたり)を皮切りに、デザイニングだけ模倣された洋風住宅が急増していきました。
その時代に建てられた住宅のほとんどは今、どうなっているでしょうか。
住宅街のあちこちで、その家屋はスクラップされ、更地となり、新しい宅地として販売されている姿をよく見かけますが、そのほとんどはこの時代に建てられたもののようです。

ちょうど、これから我が家を創ろうと思っている皆さんの中にも、親御さんのお住まいを建て替えて新築しようという方もいらっしゃるかと思います。
このように、近年の日本では平均30年程度で取り壊されることが当たり前になっています。
生活様式が変わったことも理由に挙げられますが、「劣化して住めない」というのも大きな理由のひとつになっています。

しかし、ちょっと考えてみてください。
はるか昔に建てられた神社仏閣。
丁寧にメンテナンスされていることもありますが、劣化したり朽ちたりしてどうしようもなくなったということは、あまり聞いたことがありません。
それはなぜでしょうか?

理由は諸々ありますが、そのなかでも劣化を防ぐことに大きく貢献しているのは、「軒」の存在です。
初詣に訪れるあの神社を思い出してみてください。
雨宿りできるほど、軒が大きく迫り出していませんでしたか?

この軒を出すだけで、外壁に雨水が当たりにくくなり、その結果、外壁が傷みにくくなるのです。
何千年もその姿を維持している神社仏閣は、いにしえの大工たちが日本の気候と向き合い、この環境にあわせて工夫した成果の表れでもあるのです。

さきほどお話した「雨に強い外壁材」を使用した場合は、その効果をより維持でき、また「雨に弱い外壁材」でも、この軒を出すだけでかなり耐久性を高めることができます。
最近では、軒がまったくない住宅も増えていますが、“カッコいい”を優先して、耐久性を無視してしまうと、そのカッコよさも長くは続きません。

私たち創建工房の設計のこだわりのひとつは、この軒を出すこと。
小さなことに見えるかもしれませんが、実は、大きな意味をもっているのです。

耐久性を阻む強敵・結露

耐久性を弱める最大の原因ともいうべきは、結露といわれています。
結露とは、冬のサッシまわりに発生する、あの水滴です。

また、結露現象は身近にも存在します。
冷えたビールをジョッキに注ぐと、ジョッキ表面に水滴が付きますよね。あれも、

結露と同じ現象です。

なぜ、結露が発生してしまうのでしょうか。

空気中には、一定の水蒸気が含まれています。この水蒸気の一定量は、その温度によって限度があるのですが(飽和水蒸気量)、温度が高いほど水蒸気量が上がり、低いほど水蒸気量の限界量が下がります。
その限界を超えたときに、水蒸気が液体となり水滴となって現れるのです。

温度の高い空気ほど多くの水蒸気を蓄えることができる=夏の湿度が高いのはこのため。
ですから、結露は冬の風物詩なのではなく、実は夏でも起こるのです。
暖かい外気が、クーラーなどでよく冷えた室温に触れると、結露は起こります。
温度が高い空気中には水蒸気量がたくさん含まれているのですから、急にその温度が冷やされると、水蒸気量の限界がやってきて、水滴化します。

窓や玄関ドアなど、結露が目に見える場所はもとより他にも、結露が発生しやすい場所があります。
それは例えば、
・家具の裏
・クローゼット、押入れ
・ベランダ下に位置する部屋 などが挙げれます。

こうした場所には、腐りにくく、傷みにくい素材を使うなど、創り手の創意工夫や知識により、住まいの耐久性は大きく変わるといっても過言ではありません。

創建工房といえば「檜をふんだんに使っている家を創っている」というイメージがあるかもしれませんが、無垢材だからといって、どこにでも檜を使っているわけではありません。
例えば、柱には檜、梁には杉といったように、日々研究を重ねながら適材適所、日本の気候にあった素材を使い分けているのです。

見えない場所に潜む結露とは

これまで例としてあげた結露は、家でいうと窓、壁、天井、床など見えるところに発生する「表面結露」というもの。
では、この結露が目に見えない壁内部、床下、天井裏などに起こったとしたら、どうなるでしょうか。
この現象は、「内部結露」と呼ばれる現象ですが、その原因は、防湿が不十分なことにあります。深刻化すると、土台などの構造材を腐らせ、住宅の耐久性を著しく弱めてしまうことになるのです。

特に壁の中で起こる「内部結露」には、最大の注意を払うことが肝心です。
壁の奥に張り巡らせる断熱材にもいろいろありますが、創建工房では濡れても乾くという特性をもつ『サーモウール』という湿気に強い断熱材を使用しています。

見えないところにこそ、こだわる。

これはとても地味で、すぐには結果が出ないので分かりづらいものですが、
20年後、30年後に必ず価値を発揮するものだと確信しています。

「家は30年しかもたない」を変えたい

日本の気候を無視したデザインや、湿度に対応した素材や工夫を施していない家では、「30年で建て替え・リフォーム」といったこれまでの住宅の常識が覆せないままになってしまいます。
30年しかもたない家だとすれば、その家はとても高い買い物ではないでしょうか。

私たち創建工房は、そんな常識を塗り替えたい!と日々取り組んでいます。
また、近年のSDGsの観点からも、スクラップ&ビルドで発生する廃材を減らすことは、地球人として一人ひとりが取り組むべき課題だと思います。
「モノを大切にする」という想いが、「長持ちさせる(耐久性)」につながります。

流行りのデザインや工法は、いつかは廃れます。
神社仏閣に挙げられるように、日本古来の文化は理にかなっていると思いませんか?
そこに、耐久性に対する答えがあると私たちは考えています。

家の寿命は健康寿命と比例する?家の耐久性が経済効果を生む

結露においては、カビやダニを発生させるため健康に悪影響を及ぼすことは周知のとおりです。これ加え、温度差のある住宅に住む人が健康を害する確率が高いという事実もあります。

例えばそれは、ヒートショック現象。
暖かい場所から急に寒い場所に移動したことにより、血管が縮み血圧が上がり、また暖かいところに戻ると急に血圧が下がるなどすることで、突然死に見舞われたりします。
特に、入浴時やトイレ時に起こることが多く、入浴中の死亡は年間約1万4000人と推測されています。(日本医師会HP「健康トピックス」より)

このような事故をなくすためにも、温度差の少ない家を作ることが重要といえます。

つまりは、家の耐久性にこだわった家は、健康寿命をも引き伸ばす可能性を秘めています。

疾患を抱えながら暮らすのではなく、健康で長寿を迎える=健康寿命が伸びるということは、ひいては病院にかかる人が減り、医療費の削減も可能にする!といっても過言ではありません。

家の寿命を考える。
こんな一見小さな視点が、住人の健康寿命や日本全体の経済にも影響を及ぼすと考えると、侮れません。

この価値をもたらすものとは?
それこそが、“技術力”。
次回は、この“技術力”についてお話したいと思います。