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2021年12月15日 家づくりコラム
耐震等級3は必要?良い家の証「長期優良住宅」とは
マイホームは、居心地のよい空間・・・だけではなく、少しでも安全な空間であることも重要な要素です。
しかも、それはより永く続いてほしいもの。
そう考える皆さんにとって、気になるのは「長期優良住宅」ではないでしょうか。
最近、さまざまな住宅メーカーの広告やCMでもよく観かけるようなったこの言葉。
具体的には、どのような住宅を「長期優良住宅」というのでしょうか。
構造検査しなくてもいい?4号特例・4号建物
皆さんがこれから建てられるマイホームは、ほとんどが木造戸建住宅かと思います。
天災が多いこのご時世、建築にはさまざまな安全対策を講じて建てられている!
と、当然思っていらっしゃることでしょう。
しかし実は、そうとも言い切れません。
この木造戸建住宅のなかでも、2階建てや平屋のことを、「4号建築物」「4号建物」などと呼ばれているのをご存知でしょうか。
これは、『建築基準法 第6条の4』に由来しています。
この建築基準法 第6条の4とは、端的にいうと
構造検査を免除しますよ(構造計算書をつくらなくてもよい)
という特例事項です。これを業界では「4号特例」と呼んでいます。
つまり、この構造検査免除に当てはまる木造2階建て、平屋住宅の建築においては、構造計算※ がなされていない建物が多く存在するということなのです。
この特例に対しては、大きな震災が発生し、建物が崩壊するたびに排除を検討する声が高まりますが、いまだ排除に至っていません。
そこで、より厳密に住宅の安全レベルと耐久性を高めていこう、と設けられたのが「長期優良住宅」です。
「長期優良住宅」って?
長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅」のこと。(国土交通省HPより)
「長期優良住宅」と謳うためには、長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成、所管行政庁に申請し、その基準をクリアして『長期優良住宅』の認定を受けなければなりません。
つまり、国のお墨付きが得られた住宅ということですので、住宅の安全のバロメーターのひとつとしての判断材料になります。
さて、長期優良住宅にはさまざまな制度基準がありますが、大きく分けると以下の通りです。
1.長期に使用するための構造および設備を有していること
2.居住環境等への配慮を行っていること
3.一定面積以上の住戸面積を有していること
4.維持保全の期間、方法を定めていること
(一般社団法人 住宅機能評価・表示協会 HPより)
いろいろありますが、1に当てはまる代表的なものは、どれだけの地震の衝撃に耐えられるかという対応力を問う「耐震性」があげられます。
長期優良住宅では、例えば「耐震等級2以上」という基準を満たしていなければなりません。
地震大国、日本。地震に対する備えは、一番気になるところではないでしょうか。
耐震等級2とは
どれくらいの地震に耐えうるかの指標が、いわゆる「耐震等級」です。
この耐震等級について、国土交通省では以下の通りに定めています。
ちょっとややこしいですね。
少しわかりやすくしてみましょう。
シンプルに言うと、数字が大きくなるほど耐震性能が高くなります。
「長期優良住宅」として認定されるためには、耐震等級2以上の対策が必要です。
つまり、「長期優良住宅」の耐震性能面においては、災害時の避難場所として指定されている学校や病院など公共施設の耐震基準と同等の強度をもっている、というわけです。これは、震度6強〜7の地震に見舞われた場合、一定の補修で住み続けられるレベルと言われています。
耐震等級3までいらない?
このようにみていくと、耐震等級2でも十分頼もしさをを感じられます。
しかし、これだけ頻繁に災害に見舞われている昨今を鑑みると、やはり対策レベルは高いに越したことはありません。
とはいえ、レベルを上げればコストも上がるのは世の常。
でも実は、耐震等級を3にしても、さしてコストは変わりません。
しかも、地震保険が半額になるなどのメリットもあり、トータルコストで考えれば、耐震等級3を求めることも非現実的ではありません。
「長期優良住宅」の基準をクリアするために、とりあえず耐震等級2のレベル(数字)を出すのではなく、住まう人のことを真剣に考えれば、耐震等級2にとどめることなく「耐震等級3」を求めることは至極当然だと、私たち創建工房は考えています。
最近では、建築業界全体でもその意識が高まっている気がします。
耐風等級
また、台風の通り道となっている日本にとって、暴風に対する対策も講じたいところです。
これには、耐風等級という基準が参考になります。
国土交通省の規定をみてみましょう。
やはり、ちょっと難しいですね・・・。
具体的に説明すると、耐風等級は、死者・行方不明者5,000人以上という、明治以降最大の被害をもたらした伊勢湾台風(昭和34年(1959年))の暴風と同等レベルに対して倒壊、損傷しない程度を耐風等級1とし、これが建築基準法の標準レベルとなっています。
これ以上強い風に対して耐えうるものを等級2としています。
耐風等級2は、長期優良住宅の基準に入っていませんが、これだけ毎年のように甚大な被害をもたらす台風。
軽視することなく、ぜひ真剣に対策を検討したいものです。
「いざ」というとき、一番安全な我が家に
とはいえ、一番高いレベルをクリアすることだけが、家づくりの目的になるのは考えものです。
そもそも“家の性能”を追求するということは、どういうことでしょうか。
家というものは、ただ住むだけの空間なのではなく、家族の命を守る場所。
そう考えたとき、「いざという時、家の中が一番安全」であるべきだと思いませんか?
もちろん、「絶対倒れない」というわけにはいきません。
しかし、できうることは講じておく。
それが、家族の命を守れる家をつくるということではないでしょうか。
また、地球規模で取り組むSDGs(持続可能な開発目標)の地球環境を保護する観点からも、30年で建て替えるというような時代は終わり、長く、永く住み続けられる家づくりは、これからの私たちにとって取り組むべき責務といえるかもしれません。
次回は、この地球環境にも関わる「長期優良住宅」のもう一つの側面、省エネルギー性能についてご紹介します。
※構造計算とは
構造物の安全性や使用性を確認するのを目的とし、構造計画で決めた骨組が、それに加わる固定荷重・ 積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力・土圧・水圧などの外力に対し、構造物がどのように変形し、構造物にどのような応力が発生するのか計算、判定し、 安全かどうかを確かめるために行う数値計算のこと。
「構造計算書」は、これらの結果をA4の紙で100 – 5000枚程度にまとめたもの。
「構造計算の方法について」 – 公益財団法人 日本住宅・木材技術センターHP
https://www.howtec.or.jp/publics/index/89/