家づくりQ&A「家づくり目安箱」
Q.家中快適にするには、「24時間冷暖房(全館空調)」が良い!というのは本当ですか?
A.快適度も上がるが、電気代も上がる恐れも!
快適に過ごすことに欠かせない、冷暖房。
特に冬に話題となるヒートショックという健康問題は、温かい場所から寒い場所に移動した際の急激な温度差により発生するということはご存知の方も多いはず。
こうした事象から話題となるのが「全館空調」もしくは「24時間冷暖房」といわれる24時間冷暖房を効かせ、家全体を適温にするシステムです。
しかしここで課題となるのが、何において「良い」か?ということです。
確かにアメリカなどでは全館空調が主流で、真冬でも半袖シャツ一枚で過ごしている人も。
全館空調サイコー!!と言いたいところですが、ここで忘れてはならないのは家の断熱性(=UA値(外皮熱貫流率))。
24時間常に冷暖房を効かせていても、その熱を逃さない=効率性が低ければ光熱費がかかってしまいます。
Q. 断熱等級って、今や当たり前の性能ですよね? でもお答えした通り、日本では2025年に断熱等級4が義務化されますがこの等級4の大阪などの地域に対するUA値0.87を諸外国の省エネ基準と比べてみると
・アメリカ 0.43
・イギリス 0.42
・ドイツ 0.40
・フランス 0.36 ※数字が小さいほど熱が逃げにくく省エネ性能は高い
と等級4のレベルが世界レベルでは標準以下の低さであることがわかります。
そんななか、国から「2030年にはすべての新築の家に断熱等級5を標準化させたい」という目標が打ち出されました。
ということは2025年時点で標準化された耐熱等級4の家はたった5年ほどで既存不適合物件(合法ではない建物)になってしまう可能性も否めません。
では耐熱等級5の家であれば、全館空調がベストに働くのでしょうか?
そこで24時間冷暖房(全館空調)と従来の部屋ごとにエアコンを取り付け、入切する「部分間欠冷暖房」システムを比較してみましょう。
※2025年義務化 ZEH基準 HEAT20/G2レベル HEAT20/G3レベル
まず、2025年に義務化される断熱等級4の環境下での「部分間欠冷暖房」利用エネルギー量を100%の基準とします。
そうすると、ワンランク上であるはずの断熱等級5の環境下で「24時間空調(全館空調)」を使用した場合のエネルギー量はなんと150%!
つまり1.5倍ものエネルギーを使うことになり、当然のことながら光熱費は大幅アップしてしまうことがわかります。
断熱等級6の環境下で同等の100%、断熱等級7の環境下でようやく60%までに落ち着きます。
結局、24時間空調(全館冷暖房)にするならば、UA値だけでなくC値(気密性能)ともに高い性能値がなければ意味をなさないことになります。
対して「部分間欠冷暖房」では、断熱等級が上がればあがるほど使うエネルギーも下がっています。
これは性能が上がるほど、すぐ暖かくあるいは涼しくなるため、長時間エアコンを付けることなく部屋の温度を快適に保つことができるからです。
一見、部分間欠冷暖房では寒暖差が出るのでは?と思うかもしれませんが、性能をしっかりと上げておけばその心配はほとんどありません。
ちなみにこの図からも耐熱等級5でも、まだ世界レベルのUA値を満たしていないことがわかることからも今後見据えるべきは断熱等級6レベルといっても過言ではないでしょう。
こうした断熱等級との関係性と光熱費を含めたトータルコストバランスを見極め、24時間冷暖房(全館空調)を検討してみては?